GAP指導者養成講座

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講座の狙い
GAPを取り組むに当たり、「日本の生産現場では、国際的に通用する『適正農業規範』の実施は難しい」という『誤解』が、農業関係機関や生産者に蔓延しているように思われます。GAPの指導者は、この『誤解』を解いて、「GAP規範」の正しい理解の下に、「生産者が主体的に取り組む具体的な手順」(農場管理規定)と「事務局が行う産地の取りまとめの手順」(農場管理システム)について分り易く指導することが必要です。
 本講座では、持続的農業生産システムを目指すGAPの原理・原則を理解し、「適正農業管理の実務」について学習し、併せて日本の農業に特有な「団体として取り組むGAP実践」の手法を学びます。
 GAPの指導者が、「団体で取り組む適正農業管理(GAP)」を新たな地域農業のビジネスモデルとして定着させ、環境を守り、消費者に信頼され、世界に通用する安定した産地づくりで日本農業に貢献することを目標とします。
対象
普及指導員、営農指導員、農場管理者など
プログラム
基本プログラム
2日間コース、3日間コース
感想
GAP指導者養成講座(GAP実践セミナー、農場実地トレーニング)に参加した各分野の方々の受講後に提出されたレポート(気付き・感想)をご紹介します。
  • 行政担当者
  •  これまで、県内で指導者向けのGAP研修会を開催する中で「GAPといえば農家にチェックシートをつけてもらうこと」、「食品安全のために付加価値をつけること」という認識の方が多数であった。しかし、生産者も指導者も、このチェックシートの配布・回収方式に意味を見いだせず、押しつけられてやらされていると感じている方も少なくない。その点、本セミナーで学んだ本来の「環境汚染、労働災害、食品危害」の3つについて、「あるべき農業の姿を示し」、「現状の問題点を指摘し」、「GAP規範に従って」、「農場の改善に向けて指導」することは、より合理的な農業振興対策であり、真のGAPへの理解が進んでいくものであると感じた。
  • 普及指導員
  •  GAPの大切さを改めて感じた2日間だった。研修の最初に私は、「農家にはやらされ感がある」と発言しましたが、それは「指導する自分達にも原因がある」ことが今回の研修で良く分かった。出荷の際にはGAPシートの提出が要件になっており、農家はGAPがどのようなものか分かっていないままにチェックシートに「○×」を記入している。生産部会などでは、GAPシートの集計結果を返しているが、指導は形だけに終わっている。今後はGAPの必要性をしっかり認識してもらい、農家の意識を変えていくことから始める必要がある。具体的には、各農家に、「汚染者負担原則」を理解してもらい、「予防原則」に従ったリスク評価を行う必要性を感じた。
  • 認証審査会社社員
  •  GAP実践セミナーを受講して以下のことが明確になった。
    1.GAPには汚染者負担の原則があること。農家は生産者として環境に配慮して行為を行う必要があり、それは事業者としての責任である。EUは補助金としてインセンティブを与える仕組みを持っているが、日本のやり方とその考え方の導入について今後工夫が必要である。
    2.GAPとは農業におけるリスク管理を実践していくものである。リスク評価はチェックリストで客観的に行い、リスクマネジメントは当事者のリスク「認識」に基づく「行動」と「動作」により実践される。農場の問題点の日々の改善がGAPであり、たゆまぬ努力が農家にとって必要となる。また、その活動を川下の流通や消費者に示すリスクコミュニケーションの取組みも必要である。
    3.GAPは統一される必要がないこと。地理的、社会的、文化的相違によってGAP規範は自ずと異なるものであるから、世界中にはいろいろなGAP評価規準がある。したがってGAP評価規準は統一しなくてもよいことが良く分かった。
    4.農場評価制度は農家教育(ツールとして)として活用できること。農家の問題点をチェックし、その重みづけをした上で対応策を提案するという農場評価制度は、取り組むべき課題の明確化やインセンティブとして非常に役立つと思われる(今までこのような農家教育システムはなかったと思われる)。
  • 農協連合会職員
  •  今回の研修会で私は、「何故GAPに取組むのか」、「どうすればGAPができるのか」、について生産者が自ら積極的に学べる状況や、その際のGAP規範、GAP指導体制をつくることを考える必要があると改めて感じた。
     従来の審査方法とは異なる「生産者の改善意識を高める農場評価のやり方」、「改善するための指針などを提案する評価報告書」など、研修会で学んだ農場評価制度は、生産者向けのGAP指導に向けた考えの大きな参考になったと同時に、その手法において物凄いヒントをもらえたと思っている。
     今後は農場評価制度をGAP指導に活かし、産地全体が発展できるような取組みを進めたいと思う。また、ここに一緒に研修受けた他産地の方ともお互い産地のために交流図れたらと思う。
  • 認証審査会社員
  •  検査員の基準合わせについては審査会社としても常にチャレンジしていかなければならない重要事項ですが、今回学んだ「農場評価制度」の点数制は、検査員トレーニングに有効だと思いました。GLOBAL GAPの総合農場認証では管理点の重みづけがされていますので、今回の評価と異なり「不適合」と評価せざるを得ない場合が多いので参考になります。
     農家が、審査結果で農場改善をする際に、指摘に対する単なる「修正」ではなく、「日本GAP規範」を前提にした是正は大いに意義があり、今後の生産活動や組織運管上に大きく貢献します。
  • 普及指導員
  •  今回の研修において、GAPは農家(産地)のどこが問題で、なぜ問題なのか、どう改善するかを、農家に気付かせ改善を促し、「良い農業の実践」につなげていくことであり、それは「農産物の質」ではなく、「農業の質を高めることである」ことを学んだ。
     また、GAPにおける適切さの3原則「@法令や科学に基づいている。A予防原則。B汚染者負担原則」を認識するとともに、経済的に成り立ち、社会的にも環境的にも持続可能な農業につながるという理解が深まることにより、「農家のやらされ感」等が解消されていくのではと考える。
     農場評価においては、2人またはグループでの討議などにより、GAP指導者にも、いろいろな考え方、見方があることを認識し、自分の経験や知識だけでは不十分であることが分かった。また、農家に改善方法を示すためには、「GAPの知識」や「農場評価の判断力」が必要であることから、農家・産地を指導する指導者の育成が重要であると感じた。
  • 行政担当者
  •  本県では、これまでGAP指導者育成に重点を置き、一般社団法人日本生産者GAP協会にご協力いただきながら、3年間にわたり普及指導員の研修を行ってきた。その結果、県内の普及指導員の多くがGAPをよく理解し、さらに農場評価を体験したことで「適正農業規範」の必要性が認識され、指導員待望の「県版適正農業規範」が作成された。今後はこの規範を基に、生産者が「自らリスクを認識し」、「農場のリスク管理を行える体制」を、JAの部会や、生産者組織の理解を得ながら、「産地で取組むGAP」として進めていく必要がると感じた。